「地方都市再生の道」長谷川徳之輔 著
第1章「衰退する地方都市をいかにして再生させるか?」
Q1人口減少,少子高齢化時代の都市問題とは?
A1
①安倍首相の「美しい国」とは何か?
今年は,2007年,平成も19年で,昭和も,20世紀も過ぎ去り,21世紀の流れが定着する時期です。ようやく15年も続いたバブル経済崩壊の後遺症を脱したといわれますが,一般国民の多くは景気が回復したという感じはなく,経済社会の先行きへの不安感不透明感は,なお消えていません。政治では,52歳,戦後生まれの安倍首相が誕生し,「美しい日本にしよう」と先行きの日本のあり方を唱えますが,「美しい日本」とは一体,何か,改めて,次の世代にとっての21世紀論,未来論が必要になっています。
②人口,賑わいに大きな偏り一都市も「勝ち組」と「負け組」が出現一
20世紀の高度経済成長が終焉して,確かに日本は,世界第2位の経済大国になりましたが,同時に高度経済成長,都市化時代の負の遺産が目立つようにもなりました。IT長者がわが世の春を謳歌している一方,フリーターやニートなどの若者も増え,貧富の差が見えて,人生の「勝ち組」,「負け組」といわれる各種の格差が拡大しています。特に国土構造では,大都市の東京と地方都市の格差が広がっています。20世紀,100年の人口の増加と移動の結果,大都市の繁栄と地方都市の衰退という二極化が顕著になり,人口,賑わいは大都市圏に偏在して,いま,大都市の繁栄,一人勝ちの様子を見せており, その分,地方都市は,深刻な衰退,空洞化に見舞われています。
③東京の渋谷街に溢れる地方の若者達
例えば,渋谷の町には,朝から夜中まで若者達で溢れています。その若者たち,東京の若者だけではなく,宇都宮,水戸,甲府,沼津など地方都市から集まってきた若者たちです。彼らが新しい都会の風俗を作っていますが,他方,若者に去られた地方都市の衰退が日に日に進んでいきます。人通りの絶えた中心市街地の空洞化で若者の姿は見られず,お母さんたちも地元では気に入ったものが見つからないと買い物はわざわざ東京へ向かうようです。
地方都市には,商店街では昼間から店を閉めてしまう閑散とした「シャッター街」が広がっています。
④二極化は歴史の必然か一都市構造が大きく変った一
なぜ,そうなったのでしょうか。それは,基本的には,100年の人口の動きと50年の大都市集中がもたらしたものです。新幹線高速道路,電話,テレビなど交通通信革命が進んで,100年前には,一月かけて旅行した日本が全国どこへでも,僅か2時間で結ばれる国土構造になっています。全国で同じ新聞,同じテレビを同時に楽しめます。20世紀後半の都市化の時代に,地価の高騰や土地利用計画の欠落など土地問題の立ち遅れから,住宅は郊外へ転出し,交通は自動車の普及で,一億総マイカー時代を生み,機能的,快適な郊外生活が選択されました。大型店舗など商業流通機能も郊外へ,病院や学校まで郊外へと都市機能が分散し,立地していきました。中心市街地から人口は便利な周辺へ逃げ出す中で,いつの間にか,地方都市の都市構造は大きく変わってしまいました。
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