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長谷川徳之輔寄稿記事

沼津駅周辺総合整備事業の現状と先行き
違約金問題を考える 長谷川徳之輔
 秋の市長選挙に向けて、いろいろな動きがあるようですが、争点はやはり、時代の激変の中で沼津駅周辺総合整備事業をどうするかにあるでしょう。あるブログで「鉄道高架事業はここまで進んでしまったし、やめると莫大な違約金が必要になるから、やらざるをえない」という市民の声に対して、「そういう理由で事業を進めるのは後ろ向きだ。静岡県東部百万都市のあり方から考えることが必要であり大所高所の理由から促進を論じることだ」とありましたが、考え方としてはそうでしょう。しかし、「ここまで進んでしまったから今さら転換はできない」という思いが多くの市民の中にあることも確かでしょう。でも、やめたら本当に「違約金」を払わなければならないのでしょうか。それが理由で事業を進めざるをえないのか、冷静に考えることだと思います。
 沼津市の責任
 多くの市民は沼津駅周辺総合整備事業の仕組みを正確には理解していないと思います。実に複雑で分かりにくいからです。「やめたら違約金」と言いますが、やめるもやめないもありません。鉄道高架事業自体は、まだ都市計画が認可されただけで、事業は始まっていません。また、事業主体は静岡県であって、沼津市はお手伝いをしているだけです。意思決定は静岡県の役割です。
 ただ、貨物駅移転と車両基地移転は、建設・運輸の協定で、沼津市の負担で、沼津市が用地買収することになっており、その費用は、沼津市が積み立てた基金から支出するか、または新たな借入金をして支出するようになっています。突き詰めれば、JRの事業を沼津市民の税金で負担するわけです。ですから、今まで沼津市が支出したものについて国や県への「違約金」があるわけはありません。
 国の補助金の返済、JR貨物への対応
 「違約金」というのは多分、補助金適正化法により、事業に対して国からの補助金が支出されている場合には、補助を受けている事業主体が、その事業を中止したら、国から受け取った補助金を返済しなければならないという「返済金」を「違約金」と言っているのだと思います。
 大型公共事業、例えば島根県の中海干拓事業を中止できなかった理由は、既に多額の補助金が支出されていたからで、補助金の返済が足かせになって事業の再検討ができなかったという理由がありました。この事業の教訓から適正化法が改正されて補助金返済義務が緩和されたものになっているはずです。
 JR貨物とは、この鉄道高架事業を進めることについて協定ができており、相互に事業を進める約束になっています。JR貨物は私企業であり、事業を変更し、中止する場合の約束事は明確ではなく、理由はとにかく、沼津市や静岡県の都合だけで事業から撤退するとなると、JR貨物の期待を裏切ったということで、なんらかの対応をすることはありえるかもしれません。
 支出されていない補助金
 鉄道高架事業自体はまだ始まっていませんし、事業主体の静岡県に国からの補助金は支出されていません(費用の半分を国が補助し、四分の一を県、四分の一を市が負担する)。補助されていない沼津市が「違約金」を負担するわけはありません。
 ただ、関連する都市再開発事業や土地区画整理事業には補助金が出ているのかもしれないので、その事業をやめたら補助金の「返済」義務は生じるでしょう。そこで沼津市は、まず沼津駅周辺総合整備事業を構成する事業の中で、鉄道高架事業と関係事業との関連、その内容や財政負担の実情を市民に示さなければなりません。
 特に、沼津駅北の旧国鉄用地を中心にする土地区画整理事業ですが、もともと事業主体は独立行政法人の都市再生機構だったはずですが、事業成果への疑問や採算性などから撤退してしまい、沼津市が施行することになったということです。
 その事業費は百九十五億円で、沼津市は関連する道路整備について五十四億円を負担するとされています。その費用に国の補助金が出るのかもしれませんが、まだ事業は進まず、補助金は出ていないでしょう。
 関連事業への補助金
 今進んでいるのは事業用地の先行取得で、沼津市の基金から用地買収費が出ているだけだと思います。沼津駅南の土地区画整理事業、大手町地区の再開発事業、関連道路整備事業の、その他の事業を含めて、これらのが全て鉄道高架事業を前提にして、鉄道高架事業がなければ施行しないものであれば、鉄道高架事業が中止されて他の事業も中止となれば、そこに投入されている補助金の「返済」義務は生じる
のかもしれません。
 しかし、このうち再開発ビルの建設は終了しており、既に清算されているはずで、補助金の「返済」はないでしょう。その他の事業は、根拠法や予算は、それぞれが独立した事業で、やるかやらないかが鉄道高架事業と直接関連があるかどうかです。
 沼津駅周辺総合整備事業について、市からよく説明を受ける必要があります。
 基金からの支出は無駄になるのか
 一番の問題は三百億円近くを蓄積した基金からの支出が無駄になるかどうかです。
 既に貨物駅移転予定地の原地区でも、土地区画整理事業が行われる沼津駅周辺地区でも大量の用地買収が進められており、その費用は市民が負担するわけですが、買収した土地が有効に活用されるのかどうかが心配になります。
 沼津市がしゃにむに事業を進めようとするのは、ここまで進んだ用地買収が無駄になってしまうという恐れと、その責任からでしょう。今の時期、鉄道高架事業の先行きが不透明なままに用地買収だけが強引に進められていますが、無駄な支出になる危険もあり、少なくとも今の時期は、これ以上の用地買収を進めるのは、しばらく見合わせるのが適切だと思います。
 先行きの不安に、あえて目をつぶって用地買収を進めるのは無責任であり、また不当支出の恐れすらあるのではないでしょうか。まず事業主体の静岡県が、鉄道高架事業について、どのような方針でいるのか、国土交通省には事業化を認可して補助金を支出する明確な意思、方針があるのかどうかが最大の問題です。
 市長選挙の意義、意思決定の条件
 この鉄道高架事業は、都市計画を決め、認可した国交省も、事業主体として責任を負うべき静岡県も、財政問題が深刻化し、社会資本整備のあり方が国民的課題となっている現状から、長期にわたり財政負担を伴う事業は積極的な対応は取れず、さりとて撤退することもできず、先延ばしにする姿勢となることは否みえません。投資効率が低い事業はやりたくないというのが本心なのかもしれません。
 全ては沼津市の方針、沼津市民の考え方次第だということになるでしょう。まず、沼津市民が選択すべきだということで、市民の意思が鮮明になる市長選挙は、その方向を決める、極めて重要な選挙になります。沼津市民の意思がどうであるかが、国、県、市の行政がことを決める重要な条件になることは必至です。それだけに、今回の市長選挙は重要な意味を持つことを、沼津市民もしっかり理解する必要があります。
(明海大学名誉教授、沼津市出身・東京都世田谷区)(沼朝平成20年7月23日号)
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