第4章「沼津の都市計画、沼津駅周辺鉄道高架化事業の意義と問題点」
Q1
沼津駅周辺鉄道高架化事業ってどんな事業か?
A1
〔下記の六つの事業〕
沼津駅周辺の都市整備事業の全体を示したもので,人が輝く躍動の街づくりを進める事業の「六つの事業」の集約したもので,最近では「沼津駅周辺総合整備事業(鉄道高架事業等)」と称しており,互いに関連する事業ですが,財源や仕組みなど制度では独立した事業です。分かりにくいのか,最近では,「鉄道高架化事業等」といわずに,「沼津駅周辺総合整備事業」と呼んでいるようです。その中心が東海道線御殿場線の鉄道の高架化事業,連続立体交差事業で,費用は,六つの全体事業で,ほぼ2,000億円(価格修正で1,823億円)になり,うち沼津市の負担が625億円で,事業の完成には,20年の時間が必要な事業だとされております。「六つの事業」の内訳は,次の通りです。
①一その1一沼津駅周辺鉄道高架化事業
1)事業費823億円(沼津市負担193億円)
これが中心の事業で,事業費は823億円で,うち沼津市の負担193億円であり,正式には,「連続鉄道立体交差事業」といいます。
施行者は静岡県,その根拠は,建設省と運輸省の協定(建運協定,連立要綱)に基づくもので,事業費の95%を道路側,静岡県および沼津市が負担する仕組みです。実際の仕事,工事は,JRが受託して行います。道路の負担の2分の1を国が補助し,2分の1を静岡県と沼津市が負担し,完成予定は,運行中の線路を移設し,
高架化するのですから,仮線を作るなどの時間が必要であり,平成32年(2020年)とされています。
2)交通渋滞の解消と南北分断の解決
東海道線鉄道延長15キロ,高架化区間は3.7キロ,御殿場線延長2.4キロ,高架化区間は1.6キロ,合計鉄道延長17.4キロ,高架化区間5.3キロであり,沼津駅の東西に高さ10数メートルの高架建造物が立ち上がります。この区間の鉄道線路が高架化されると,交通渋滞が解消され,南北分断が解決され,自由,円滑に人,モノの移動の確保できます。国道,県道,市道8路線が整備されて,4車線の道路に拡幅されます。13箇所の踏切りが除去されて,鉄道跡地に14ヘクタール,鉄道高架下に4.7ヘクタールの土地が確保できるとされています。
3)JRはこの事業に消極的である
そもそも,鉄道高架化事業は,輸送力を増強するJRのための事業ではなく,沼津市の都市計画にとって鉄道が障害になっていることから,それを取り除くと言う事業であり,鉄道側に何のメリットもある事業ではありません。したがって,JRは消極的であり,それを解消するために全面的に都市,道路サイドが身銭を切ってでも,支えると言う姿勢をとらざるを得ないのです。
②一その2一新貨物駅,新車両基地の整備
1)JRへの補償措置
沼津市の負担で既設の貨物施設の移設と車両基地の整備が進められます。原地区での事業で,その費用は沼津市が負担し,用地買収も沼津市の仕事です。鉄道高架化事業の補償措置としての対策であり,事業には都市側,道路が全面的に責任を持つと言うことになります。
新貨物駅(面積11.8ヘクタール)事業費は101億円そのうち沼津市の負担は79億円で完成予定は平成21年度(2009年度)と計画されています。1日5本の貨物列車が止まり,荷物の積み下ろしが行われ,1日50台の運送トラックが出入りします。
新車両基地(面積5.9ヘクタール)事業費は108億円そのうち沼津市の負担107億円であり,完成予定は平成23年度(2011年)と計画されています。
二つを合わせた合計235億円のうち,沼津市の負担は195億円であり,全体の83%を負担します。完成した施設の所有権,管理権は,JRのものになります。
2)JRだけが得をする鉄道高架化事業
鉄道高架化事業の,全体事業費は1,032億円でうち,沼津市の負担は,388億円で38%を負担するわけです。鉄道高架化事業は,JR会社にとっては,大変魅力のある仕事でしょう。費用の大部分を地元の沼津市民が負担してくれ,自分は,ほとんど,費用を負担しないで1,000億円を超える事業を,20年かけて施工することができます。JRになって新規の土木建築の仕事がなくなった状況で,この事業で20年間土木や建築の職員の仕事を続けることができます。
新設拡幅された鉄道施設はすべてJRの所有物,管理物に成ります。将来,輸送事情が変わって,使われなくなったとしても,自由に処分できるでしょう。民間会社になったJRとしては,自分の利益に成ることを考えるのは当然でしょうが,沼津市民としては,釈然としないのではないでしょうか。
③一その3一沼津駅南土地区画整理事業
駅南側の土地区画整理法による宅地,市街地の整備事業で,施
行面積12.5ヘクタール,施行者は沼津市で,事業費は163億円,うち沼津市の負担は75億円と46%を負担します。完成予定は平成24年度(2012年)とされており,ここに駅前広場,道路などの公共施設が整備され,文化や芸術,教育施設が整備されるとされています。
④一その4一静岡県東部拠点特定再開発事業
駅北側旧国鉄用地を中心にした土地区画整理事業で施行面積27.4ヘクタール,施行者は独立行政法人の「都市再生機構」が担当します。最近の情報では,事業の採算性のなさから都市再生機構は,事業から撤退してしまい,沼津市が事業主体にならざるを得ないようです。事業費195億円でうち沼津市の負担は54億円(関連道路の負担など)とされています。完成予定は平成23年度(2011年度)でここに,事務所,商業施設,文化施設など,さまざまな高度都市施設の整備されることが予定されています。専門の再生機構が手を引いてしまった事業に素人の沼津市が開発のリスクを取れるのでしょうか。
⑤一その5一大手町地区再開発事業
市街地再開発法による駅前市街地の再開発事業で,施行面積1.9ヘクタールに20階建てのマンション(104戸),450台分の駐車場など商業施設のビルが建設されます。施行者は沼津市で事業費128億円,うち,沼津市が負担29億円と23%を負担するとされています。何故マンションのような民間事業に沼津市が資金を出すのかと批判がありますが,既に工事は竹中工務店に発注されており,完成予定平成19年度(2007年度)とされています。
⑥一その6一関連道路整備事業
国道,県道,市道などの関連する道路の拡幅整備事業が進められます。4路線,三つ目ガード,中央ガードなどが4車線になります。鉄道線路の下だけが4車線なりますが,それから先の道路がどうなるかは,よく分かりません。都市計画法,道路法による事業で施行者は沼津市,事業費は142億円うち沼津市の負担は79億円,56%になります。完成予定平成17年度(2005年度)と計画されています。
加えて,駅北には民間施設,キララメッセ,シネマコンプレックスの整備等の民間投資を予定しています。「六つの事業」については,沼津駅周辺総合整備事業として一括して定義されていますが,鉄道高架化事業には連動しない事業もあり,それぞれの必要性,妥当性は,鉄道高架化事業の是非とは別に検討しなければなりません。それぞれが,鉄道高架化事業の計画と一体になって,沼津駅周辺総合整備事業として位置づけられているわけです。
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