Q6巨額な負債を招いた公共事業はどうなったか?
A6
①身分不相応なインフラー30年前の田中角栄内閣の残した巨額の負債一
田中内閣の日本列島改造論が語られたのはもう30年も前のことですが,それから僅か30年で日本列島の四つの島は,新幹線,高速道路で結ばれ,人口400万人の四国と本州には,3本の巨大な架橋が,人口500万人の北海道と本州とを結ぶ青函トンネルが完成しています。それも,人口6千万人のイギリスと2億人の欧州大陸を結ぶドーバー海峡トンネルが出現する前のことです。アフリカと欧州を結ぶジブラルタル海峡には,いまだに,トンネルも橋もありません。しかし,壮大な国土開発は,巨大なインフラを整備した成果とともに,巨額の負債も作ってしまいました。採算性に欠ける3本の本州四国架橋には多額の税金が投入されるなど,身分不相応のインフラの負債が今の日本経済,財政を苦しめています。
②行き詰った「全総計画」
過疎過密を解消するというスローガンで,新幹線,高速道路,港湾などの社会資本を整備する,過疎過密の解消を図る,そのための公共投資の総合計画として,戦後まだ傷の癒えぬ時期,1956年に,国土総合開発法が制定されて,各内閣は競って国土総合開発計画を策定しました。1962年に池田内閣の地域間の均衡ある発展を図る拠点開発構想,東海道ベルト地帯開発に始まって,バブル経済崩壊後の橋本内閣の参加と連帯の多軸型国土形成の基礎作り構想まで5次にわたり,意味不明瞭,美辞麗句の官庁作文の国土総合開発計画が作られ,中央主導,官僚主導の制度,計画として公共事業の拡大の旗振り役に使われてきたのです。
③夢から覚めた「箱もの」行政の転落
しかし,財政危機,経済構造の転換の中で,新幹線,高速道路の整備も進み,公共事業に対する国民意識にも大きな変化が現れており,もはや国土総合開発が国民に夢を与え,経済を再生する手段にはなりがたく,国土総合開発計画への国民の関心も薄れてしまっているようです。国土総合開発計画は,あまり意味が分からない国土形成計画と名を変えていますが,今の時期,役に立たない無駄な仕事,ただ利権を確保するだけの公共事業,「箱もの」行政を進める目的,意義は薄れてしまっています。地方都市でも, 都市再生に,やみくもに「箱もの」づくり、公共事業をありがたる風潮は消えていくでしょう。
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