沼津市役所都市計画部
静岡県庁都市基盤部都市局街路整備課
沼津土木事務所御中川勝知事の沼津駅鉄道高架推進への発言を契機にまた、論議が高まるものと思います。私は、現在は沼津市民ではありませんが、沼津の出身であり、沼津の街に愛着を持つ、元沼津市民です。建設省に勤務した土地都市問題の専門家でもあります。この10数年、一市民、一専門家の立場で、故郷沼津の街づくりに関心を持ち、鉄道高架問題への発言をしてきました。行政、市民が、合理的で市民の利益を考えた街づくりへの論議が行われるように願っての、ささやかな市民活動だったと思います。無為に続いてきた鉄道高架論義も、もはや決着をつける最終段階にあり、今こそしっかりした論議が行われるように、私の知見を市民や行政にお届けしたい、少しでも参考にしていただきたいという思いで、最近のニュースで東京都心、JR三田駅と品川駅の間の13ヘクタールの鉄道用地の再開発事業が報道されておりますが、お調べかと思いますが、その話と、さらに最終段階にあって、知事、市長、議員、専門家、マスコミ、市民の活動への評価と期待について、私の見方をお話しし、お聴きいただきたく、この文を送らせていただきました。意のあるところをご理解いただき、お聴きくださるよう、よろしくお願いいたします。 2014.7.29 明海大学名誉教授 長谷川徳之輔
東京都心のJR再開発と沼津駅鉄道高架との比較、あまりに大きな格差沼津駅鉄道高架事業は如何に意味がなく、無駄な事業なのかを、今進み始めている東京都心の鉄道用地の再開発と比較して見てみよう。山手線、京浜東北線、東海道線、京浜急行線、それに東海道新幹線が行き来する三田駅から品川駅の間に、広大なJR用地が広がっており、南北の交通は全く遮断されており、都心の都市活動が著しく阻害されているが、百数十年も放置されたままであった。鉄道線路を高架にしようなどと誰も考えてこなかったのであろう。そこに、臨海部開発に関連したのか、この広大なJR用地に都市再開発の動きが出て、東京都やJR当局からその計画が発表されている。この地のJR用地13ヘクタール、三田駅と品川駅の間に山手線の新しい駅が設置されて、ここに8棟の160メートルの高さの超高層ビル、うち3棟のマンション、5棟のオフイスビルが建てられて、10万人もの従業者が働く新都心の街になるのだという。注目されるのは、自動車や歩行などの南北交通や地域内の交通は、用地の2階に道路、歩行者通路、駅前広場が作られて、南北自由通路で処理され、5本の基幹の鉄道はそのまま平地を走り、今2階を走っている京浜急行も1階部分、平地に下して運行することになる。はなから鉄道の立体交差など全く考えてはいない。コストの面からも土地利用の面からも、極めて合理的な計画を選択している。それでいて、その整備の費用は5000億円と計算されているという。その費用は、多分鉄道料金、都市再開発が生み出し、多額の公的資金、税金を使うものではあるまい。他方、同じJR用地の沼津駅周辺鉄道高架、数キロの区間の鉄道高架事業だが、その費用の大半は公的資金、税金であり、静岡県民、沼津市民が負担するのである。土地利用面からも、出来上がったJR施設の用地に新しい土地利用は生まれない、JR鉄道運行の運行以外の商業活動も経済活動も予定されていない、鉄道の走行便益が増える訳でも、都市再開発に寄与するわけでもない。20年先に南北の自動車交通の便が良くなるかもしれないという利益だけである。それでいて、その総費用は2000億円だという。公的資金、税金であるが、その見返りはほとんどない。5000億円と2000億円、規模のスケール、その投資効果、新しい都市機能などから見て、あまりに格差が大きすぎる。沼津駅鉄道高架は無駄な事業の極致ではないのか。両者は同じJRの計画であり、どちらが効率的であり、どちらを優先するかはだれが考えても、すぐわかる話である。静岡県も、沼津市のもう一度頭を冷やして、もっと合理的に考えることであり、計画の評価を長いお付き合いになるJR当局によく聞いてみることである。知事、市長、議員、役人、マスコミ、市民の姿勢を問う川勝知事の沼津駅鉄道高架の推進か見直しかに関する判断にあたり、知事として諸情勢を観察し、鉄道高架の計画、事業を熟慮、熟考した結果、推進する決断をしたというのは、あまりに自分勝手な言い方であり、その言い分、姿勢は理解の外である。何をおいても、一番肝心な判断は、鉄道高架事業の目的、事業の効果、必要な費用、その負担などをどう見て、どう評価したのかの説明であり、それは何も説明されてはいない。政治力学からなのか、既得権に縛られているからなのか、只推進することに決めたというだけの学者らしからぬ実に乱暴な結論の出し方ではないのか。有識者会議やPI委員会の論議に留まらず、これまで積み上げられてきた論議や意見などを知事はどう理解し、評価しているのか、熟慮、熟考したというならば、具体的な数字もあげて、しっかり説明しなければなるまい。県会議員や市会議員の政治家の判断はどうなのか、推進することに同意するという言は、ほんとに県民、市民の利益と負担を十分に知った上での判断なのか、体制への付和雷同、既得権の擁護や過去のしがらみに囚われた政治家の事なかれ、利害損得の立場からの主張ではないのか。経済社会の大変動の中で、財政が窮迫している人口20万人足らずの地方都市に2000億円もの新規投資ができるし、やるべきであると、自分の意見として本心からそう考えているのだろうか。議員一人一人の意見を聞いてみたいものだ。都市計画、街づくりの専門家、プロたち、国、県、市には役人として、その知見を発揮する人材がそろっている筈である、街づくりへの知識、経験が十分で公正な評価、判断ができるプロフェショナルである。この10数年、鉄道高架の計画づくり、事業実施について、プロとして、彼らは何をしていたのか、内心忸怩たる意識はないのか、政治が混迷する今だからこそ、専門家プロとしての、見識を発揮すべきだと考えないのか。適切な世論を形成するのは、メディア、マスコミがどう報道するかにかかっている、本来マスコミには公平公正で中立的な立場が求められるものの、自らの判断、評価をすることもマスコミの重要な役目であろう。それには、しっかりした取材と分析評価する知見が欠かせない筈だ、地方の記者は若くて、経験不足であるのは否めないが、鉄道高架に関する体制の報道をただ伝えるだけでなく、適切な評価ができるように知識経験を広めてもらいたいものである。ことを最終的に決めるのは市民であり、市民の意識こそ肝心であるが、かって、石油コンビナートの進出を拒み、この地域の優れた自然環境を守り抜いた先輩市民がいたにもかかわらず、恵まれ過ぎた自然、都市環境に安住して、何事にも「おらは知らないよ」という退嬰的な市民意識が強まり、市政の刷新が遅れ、鉄道高架の混迷を招いてきたのではないのか、沼津市民は他人事だと只傍観しているのではなく、時代の厳しい変化を認識し、自らの問題として積極的に声を上げることが何より必要ではないのか。20数年の混迷の時代を経て、今こそ沼津市民の市民意識の高さ、政治行政の責任感の強さ、民主主義、地方自治の機能、役割が強く問われる時である。故郷沼津の街を愛する元沼津市民として、一言申し上げたい。 明海大学名誉教授 長谷川徳之輔 沼津市香貫生まれ、沼津東高 第7期、1959年建設省入省、道路局、計画局、経済企画庁、住宅都市整備公団等勤務、1985年 建設経済研究所常務理事 1995年明海大学教授、2010年退職。PR
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