Q.2何のための鉄道高架化事業か、そして何の役に立つのか?
A2
①沼津駅周辺整備事業の効果
1)次の三つである
沼津駅周辺総合整備事業の効果は,次の三つと説明されています。
(i)南北交通が円滑化する。(踏切りを13箇所なくし、19箇所の道路を新設拡幅する)
(ii)都心に新たな土地を創出する。(鉄道のスリム化と郊外移転で14ヘクタール,高架下利用で4.7ヘクタール,あわせて18.7ヘクタールの土地)
(iii)沼津駅と駅前広場を一新する。(南北広場を結ぶ幅25メートルの自由通路ができる)
2)いくら得するのかが肝心
この事業によって,駅周辺に,「人々で賑わう町」,「歩いて楽しい町」,「環境のいい町」,「災害に強い町」が生まれるということです。やや抽象的な説明であり,本質的なことは説明されているとは言い難いのです。問題は,その効果が,金銭的にどのくらいの額になるのか,その効果を生むためにコストがどのくらいかかっているのか,どのくらいの時間が必要かなどの説明が必要なのです。同じ効果をつくるに,もっと安く,早くできる方法がないのか,などもっと広い検討が必要です。コストと便益の計量的な分析が示されなければなりません。
②「費用対効果」って何か一費用便益比B/C=2.7一
鉄道高架化事業にいくら費用,つまりコストがかかり,その事業によってどのくらいの利益があるのか。その比率を「費用対効果」といいますが,大規模な公共事業では必要不可欠な数値であり,この事業については,沼津駅付近鉄道高架化事業(路線名沼津南一色線)の「費用対効果分析」が示されています。市役所や県庁は,あまり説明したくないのか,B/C=2.7と言う結果だけ示して,計算根拠などの中身を公表していないようです。分かりにくい話ですが,大切なことなのでもっと分かりやすく,説明してみましょう。
1)結論より,計算過程が肝心
費用対効果は,平成11年に建設省都市局が作成した「連続立体交差事業の費用便益分析マニュアル(案)」によって計算されており,それによると,「総便益B」は,高架化事業を施行しなかった場合に発生する費用から高架化事業を施行した場合の発生する費用を差し引いた額に,踏切り除去に伴う費用を加えた額だとし,その額は,年間,時間便益(走行時間の短縮を金銭評価したもの)が90.34億円,走行便益(走行円滑化による燃費向上による便益の金銭評価)が3.29億円,それに交通事故減少便益が0.39億円で,総額年間94.02億円の便益があると計算されるということです。踏切り除去の便益は,6.02億円と計算されています。
2)「総便益(B)」の計算
総便益は,完成後40年間の便益を合算して価格時点の平成31年に年率4%で原価に還元した結果が,総額で1,946.57億円であり,加えて踏切り除去の便益が124.69億円,合わせて2,071.26億円の便益があると計算されるということです。
③費用対効果で何が分かるのか
1)「総費用(C)」の計算
一方,「総費用(C)」は,平成15年,2003年を基準年次とし,建設費用774.66億円(連続立体事業費787億円マイナス鉄道事業者負担32億円プラス街路事業費用376.8億円)プラス維持管理費(完成後40年間の維持管理費)マイナス用地残存価格21.27億円で754.7億円と計算されています。従って,総費用便益比,B/C(総便益/総費用)は,2,071.26億円/754.7億円ですから,2.74になるということになります。
2)数値が公表されない費用対効果分析
「便益と費用」の基準年次が,前者が,平成31年で後者が平成15年で何故16年の差があるのか,よく分かりませんが,両者の基準年次を平成31年,(2020年)にそろえれば,金利を加えて,その費用は1.9倍の1,434億円になるはずです。これだけでも,B/Cつまり,「総便益/総費用」は,1.44に低下します。最大の問題は,便益の計算の基礎になる鉄道を挟んで南北間の現在の自動車交通量,将来の自動車交通量がどのくらいなのか,遮断交通による損失時間がどのくらいなのか,時間単価がいくらなのかなど肝心な「費用対効果分析」の基礎の数値が明確にされていないことです。それには,2030年の沼津市,その周辺地域の経済社会,土地利用,交通量などの数値が示されなければならないからですし,確かにその数値を予測することは大変困難です。
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