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有識者会議を見て3

⑨ 長谷川徳之輔
 第6章いかにして軟着陸を図るのか
 これからどんな問題が出るか、どうして解決するのか
 さて、有識者会議は、鉄道高架事業を推進するという結論を出しました。はたして静岡県や沼津市は、この結論をどう受け止めるでしょうか。
推進するにしても、見直すにしても、重い決断を迫られるでしょうし、いつまでも先延ばしし続けることはできません。いよいよ、最終の段階にあります。
 このような事情にある
沼津駅周辺総合整備事業、鉄道高架事業は、どういう選択が行われ、これからどう進むのでしょうか。どうしたら、傷を少なくした軟着陸ができるのでしょうか。
 第一に、六事業のうち、原地区への貨物駅移転が中止されるだけで鉄道高架事業本体、残りの五つの事業はそのまま、計画通りに進むのでしょうか。
 第二に、鉄道高架事業が中止されて、南北横断道路の整備、駅舎の屋上駅、屋上広場などの新規の事業に都市計画が変更されるのでしょうか。
 第三に、既に沼津市が買収している高架事業予定用地をどう処理するのでしょうか。
 第四に、鉄道整備のために積み立てた約三百億円の基金の穴埋めをどう処理するのでしょうか。
 第五に、ここまで事業を進めてしまった行政、議会の責任をどう問うのでしょうか。
 などなど、いろいろな問題を解決しなければなりません。
 一番肝心なことは、沼津駅周辺総合整備事業を考えた時点と今の時点では、大きく経済社会環境が変わってしまったこと、
これまでの行財政の考え方、仕組みが通用しなくなっていることを、市民も行政もしっかり認識しておくことであり、過去の失敗、不作為を今になってあげつらっても、なんにもならないことを認識しなければなりません。過去は過去として処理し、これからどうすべきなのかを、考えなければならないのです。
 進むも地獄、止まるも地獄ですが、もはや先延ばしはできません。決断をしなければなりません。
過去を取り戻すことは困難であり、高い授業料を払わされた、と覚悟するしかありません。

 しっかりした決着を
 第一の問題は、都市計画は変更されず、事業がなし崩し的に先延ばしされることです。事業は止まっても、計画はそのままにしておいて、いつか復活するとして処理を先延ばしすること、責任の先延ばしであり、公共事業では、従来はこのような対応がされることが多かったと思います。
 しかし、貨物駅の移転を取りやめては、肝心の鉄道高架事業自体が進まず、残りの事業も進まないことは前述のとおりです。先延ばしすることは、問題の解決にはならないのです。全部の事業がストップして、店晒(たなざら)しになるだけです。
貨物駅移転が消えるからには、全体の計画の見直しをしなければならないはずです。
 第二に新しい計画を決める。南北自由通路や屋上駅などに変更することです。計画の作成、財源、費用負担などJRとの交渉、国、静岡県、沼津市との調整を考えると、すぐに転換することは難しく、相当長期の時間を余儀なくされるでしょう。
 現行の鉄道高架事業を中止したことで、JRの反発を買い、話が容易に決められない恐れもあるでしょう。まずは、小田原駅、清水駅などの自由通路や横断施設の事例を徹底的に調査して、情報資料を集めて、それを市民に公開して、市民全体の理解を求めることです。計画作成には、市民、商店街、専門家の参加を求めて、市民運動を高めることだし、世論の力で市民意識を高めることしかないでしょう。
 第三は、買収した用地を無駄にしないことです。富士見町地区、原地区には沼津市が買収した用地が散在しています。沼津市は、その実態を公表したがりません。しかし、そのまま放置することはできません。どう利用するか考え、円滑に資産処理を進めるには、実態を隠すことなく、しっかりした情報資料を整備して、新しい利用方法を考えなくてはなりません。
 これらの土地はバラバラですが、鉄道高架下の利用より、はるかに利用効率は高いでしょう。原地区の土地はまとまった土地であり、教育施設、医療施設や市民公園など公共的に利用できるかもしれません。
 富士見町の土地は、高架事業用地を生み出すのではなく、良好な居住環境を整備するための区画整理事業を進めていくことであり、沼津駅周辺の立地条件を生かした有効利用の道を探ることです。
(沼朝平成23年7月21日号)

⑩ 長谷川徳之輔
 使ってしまった基金の金
 第四は、市民が営々として積み立てたはずの300億円近い、鉄道高架事業を進める資金、基金がどうなっているかです。
 これまで鉄道高架事業の沼津市の負担は、基金が積み立てられているから大丈夫だと説明されてきました。確かに現金であれば、そういう話も成り立ちますが、今、果たしてこの資金がどのくらいあるかです。
 積み立てた資金は現金であるわけでなく、土地の買収、市の他の事業への流用などで、大半は使われてしまっています。基金の財務状況は必ずしも明確に示されている訳ではありません。
 そもそも、鉄道高架事業のために積み立てたという基金が、もし鉄道高架事業をやらないとした時に、どう処理したらいいのかも明確ではありません。
 基金と言っても、金に色目があるわけではありませんから、税金を積み立てたのではなく、借入金を基金に編入して積み立てたもので、原資は市の借入金でしょう。借入金は、いずれ金利を加算して返済しなければなりません。
 基金が運用上、一時的に立て替えた他の事業への流用先の資金が返済される見込みもないでしょう。使ってしまった資金を取り戻すことはできないし、買収した土地も、バブルの崩壊で地価の変動で下がってしまった土地価格を取り戻すこともできはしないのです。
 いずれにしても、三百億円近くの基金が沼津市民の大きな負担になることは避けられないでしょう。

 最終的には沼津市民の責任
 第五は、究極の問題ですが、ここまできてしまった政治、行政の責任問題です。
 これまで、ただ、貨物駅移転など鉄道高架事業に付帯した事業が、だらだらと進められてきたのは、沼津駅周辺整備事業が見直されず、毎年の予算の消化という行政の惰性の動きからであり、同時に、鉄道高架事業を見直し、中止することによって、これまでの事業に生じた損失に誰が責任を取るかを明確にすることを避けてきたことも、当事者には正直あると思います。
 二十年余り、国、静岡県、沼津市、それにJR当局が、それぞれの思惑で、鉄道高架事業にかかわってきましたが、時代の転換により、これまで適切だと思ってきたことが変質してしまい、正直に、転換や見直しを言いかねて、知らん顔して先延ばしを図り、責任を他に転嫁してきたのではないでしょうか。
 本来、鉄道高架事業の事業主体である静岡県も逃げ腰で当事者意識が希薄ですし、鉄道高架事業の施行者が都道府県と指定市に限られていたものが、事業の途中で人口二十万人以上の都市においても施行できることになったこともあり、沼津市に施行者の責任を転嫁させかねません。
 公共事業縮減の中で、鉄道高架事業の政策や計画の改革に逡巡する国も、これからの方向を決めかねて、だんまりを決め込むでしょうから、究極の責任は、本来は鉄道高架事業の施行主体でもない沼津市、沼津市民が負わなければならなくなってしまうことです。
 国も、県も、今までほとんど鉄道高架事業の予算も計上していませんし、高架事業費を負担しておりません。用地買収の費用は、すべて沼津市民が基金という名の借金で負担してきたのです。事業の転換、中止に伴う損失は、国や静岡県ではなく、沼津市が、沼津市民が負わなければならないのです。
 これから始めなければならない鉄道高架事業の本体工事、使ってしまった基金の三百億円近くに加えて、先行きの分からない事業に、これ以上の資金をつぎ込むことの愚かさは、誰しも感じているでしょう。行財政を預かる沼津市長も、市議会も、そのことを痛感しているはずです。
 三百億円近くの基金を無駄に捨てることになっても、さらに大きな負担をしないために、これ以上の事業は見直す、その損は仕方がないと、受け入れるしかないのだと思います。今さら、これまでの政治や行政の責任を問うたところで、市長や市議会は何回も変わっており、市議会も市民も当時は、この鉄道高架事業の計画を認めていたのですから、究極の責任は、沼津市民全体にあると思うしかありません。
 このような公共事業の転換に伴う損失は、一人、沼津市に限りません。八場ダムも諌早湾の騒動もそうですが、経済社会の激変の中で、日本中に似たような損失が発生していることでしょう。沼津市民は、ずいぶん高い授業料を払わされることになりますが、「これ以上の損は避ける」、そう思うことが事態の解決を進めることになるのではないでしょうか。
 県民も、市民もしっかりと、有識者会議の答申を真剣に読み砕き、次の世代、子どもや孫達の世代の利益を考えて、どうしたらいいのか、自らの意見を持つことです。
(おわり)
 【はせがわ・とくのすけ=一九三六年、沼津市生まれ。五九年から旧建設省に勤務。八五年に退官し、財団法人建設経済研究所へ。九五年、明海大学不動産学部教授となり、二〇〇八年に退官し、同大名誉教授。専門は土地問題、社会資本問題などの社会工学。東京都目黒区在住】
 訂正20日付二面、有識者会議答申に関する連載で、下から三段目最終行から、その下段一行目までが「旧国鉄は姿を消し、JR算も向上し、経営は大き」とあるのは「旧国鉄は姿を消し、JRは採算も向上し、経営は大き」が正しく、二字脱落による誤りでした。訂正します。
(沼朝平成23年7月22日号)
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