議員の質問めぐり全体会議
議長が声明読み上げ注意促す
市議経験者からは疑問
「問題ない内容」「発言にタガはめるもの」
市議会は、二月定例会における総括質疑・一般質問での江本浩二議員(未来の風)の発言を捉えて生じた空転にかかわり、議員全体会議を十四日、市役所委員会室で開催。公開としたため、空転当日に本会議を傍聴した市民らが詰め掛けたが、杉山功一議長が声明を発表しただけで終わり、どのような議論がなされるか見守った傍聴者にとっては肩透かしを食った形となった。
杉山議長は用意した文書を読み上げる形で、「発言通告書の内容と実際の発言の間に疑義が生じたこと」「議場での議員の発言に問題があったこと」が端緒となり、「問題を生じさせた議員との調整のために多大な時間を要し、本会議を長時間休憩せざるを得なかった」と空転の原因を挙げた。
さらに、「議場外のこととはいえ、議員が書いたブログの内容が、数カ所にわたる事実無根の記述で沼津市議会を誹謗中傷し、本市議会の品位と良識を著しく汚したばかりでなく、市民の本市議会に対する信頼を深く傷つけた」と本会議場以外での問題点を指摘。
その上で、「議員全体会議の場で、私から直接、全議員の皆様に、この間の一連の問題が収拾するまでの経緯と、議場外とはいえ、現在、様々な場面で問題が提起されているブログについて、議員の皆様に共通認識を持っていただくために開催させていただきました」とし、空転初日の二月二十二日本会議からの経過を報告。
まず、同日の江本議員の「道路特定財源」に関する質問が「『発言通告書』に記載された項目から逸脱したものであったこと」、次に「沼津駅北拠点施設整備事業」についての質問は、新年度予算案に「立体駐車場の基本・実施設計と展示イベント施設などの基本設計ほか、として七千万円が計上されていること」を理由に、細部質疑に当たるものであって総括質疑・一般質問で取り上げるべきではなかったことを指摘した。
二十二日の本会議は、この江本議員の質問中、「質問項目にない。議長、質問をやめさせろ」などと議場から不規則発言があった後の午後二時五十分、杉山議長が「休憩」を宣言。
休憩中、会派代表者会、議会運営委員会が断続的に開かれ、江本議員から事情聴取。江本議員は会派で協議した結果、発言を取り消し陳謝する考えだったが、午後八時に再開された本会議で杉山議長は、延会手続きを取っただけで取り消しについての所作をせず、結論は週明けの二十五日に持ち越された。
ところが二十五日になると、質問の取り消しが振り出しに戻るとともに、発言取り消しに納得できない江本議員が二十三日、ブログに「事の顛末」を記載した点が追及されることに。
ブログには「『発言削除』という、本来守らなければならない議員の発言を抹殺しようという、信じられない不当行為が堂々と行われました。皆さんに是非とも沼津市議会の現状を知っていただき、一緒に考えていただきたいと思います」と書き込まれた。江本議員は指摘を受けて、該当する部分を削除した。
全体会議では、「『発言通告書』に記載された項目から逸脱したもの」とした「道路特定財源」の質問について杉山議長は、「精査の結果、その発言内容は誤ったものではないが、議会運営委員会確認事項にそむいたもの」だとし、江本議員を厳重注意。
そして声明文の最後で、「議員一人一人が言論の府、また、良識の府でもある沼津市議会の一員であるという自覚を持ち、日々の研鑽に励み、二十一万市民の福祉向上に努めていくことを全員で再認識していただきたいと思います」と結んだ。
今回の一連の出来事について昨年四月まで五期二十年間にわたって市議を務めた川口三男さんは、「江本議員は財政問題をただす中で道路特定財源を尋ねた。私も在職中、通告した政策課題の議論の発展の中で様々な質問をしてきた。議場から不規則発言はあったが、発言の取り消しを求められたことはなかったと思う」と振り返る。
また、「通告書に記載しなかったことであっても、市当局との質疑応答の中で関連質問をすることは当然出てくる。それを通告書にないから『疑義がある』となれば議論はできないことになる。江本発言は全く問題ない」との見解を示した。
さらに、「休憩」を宣言した杉山議長については、「議場からの『発言通告書にないからやめさせろ』の不規則発言に議長が同意見であるなら、『不適切な発言があったので内容を精査します』と、議場にも傍聴者に対しても休憩理由を示すべきだ」と指摘。
「細部質疑」だから一般質問にふさわしくない、と問題となったことについては、「予算の細部について例示して尋ねたことは細部質疑には当たらないと思う。市長の施政方針を受け、新年度予算の中で質問したのだから何ら問題ない。沼津駅北拠点施設整備の質問の中で(方向違いの)子育て支援策を質問した訳ではない」と話した。
川口さんは「謝る必要がなかったのに陳謝したことが問題。江本議員の手落ちはそこだけ」とする一方、「貨物駅用地取得も予定通りに進まず、駅前再開発ビルのテナントも市民が期待するものではない。沼津駅周辺総合整備事業に対する焦りを推進派が持っているのではないか」と背景を語った。
また別の市議経験者は、まず「議長の所作は間違い」だと指摘。「今回の問題は議員全体会議を開いてまでやることではない。同僚として、仲間の議員としてアドバイスすれば済む問題」だとの考えを示した。
ブログ問題については、「ブログは政治をやる人にとってはネット社会における宣伝活動の一手段。
『議員は発言を含み、議会外の行為はとがめられない』にタガをはめられたのでは政治家として活動できない。発言の自由は憲法でも保障されている」と指摘。
新聞や議会中継のテレビでしか知らない江本議員について、「本会議でも、委員会でも、勉強している様子が質問に現れていて、いい質問もしている。鉄道高架推進派にとっては、彼に対するストレスがたまっていたのだろう」と分析する。
杉山議長は声明の中で、議会のルールにのっとった質問に加え、「市民に分かりやすい質問」を求めたが、当日の本会議を傍聴した市民からは「よく分かった。当然の質問で、あれのどこがいけないのか分からない」という声が聞かれた。
江本質問は市民には分かっても議員には分からない質問だったというのだろうか。
全体会議開催の趣旨として杉山議長は「共通認識を持っていただくため」としたが、共通認識を持つために必要な議論はなく、議長からの一方通行による「通告」だけ。「会議」とは名ばかり、公開の場で議長が注意を与える、いわば公開での「訓告」あるいは「戒告」という結果に傍聴者は絶望感をにじませていた。
(沼朝平成20年3月19日(水)号)PR
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