市議会2月定例会:質問事項めぐり空転
「通告なくルール違反」の指摘:当局は応じて答弁したのに
傍聴からも「なぜ、あれが」と疑問の声市議会二月定例会は二十二日午後、本会議を再開し午前に続いて総括質疑・一般質問を行った。伊山昭議員(フォーラム21)は「土地埋め立て等の規制」、伊藤正彦議員(自民党NUMAZU)は「東部広域合併」「新地方公会計制度」、江本浩二議員(未来の風)は「沼津駅周辺総合整備事業」について質問。江本議員が質問を終了した二時五十分、杉山功一議長が休憩を宣言し、休憩中、伊藤議員と江本議員の質問について精査が行われ、延会とするため、八時に再開するまで五時間余りを費やした。
伊山議員は浮島地区の農地について、「目的が分からない埋め立てが進み、中には産業廃棄物などが混じっているのではないかと住民が心配している」ことを挙げ、県の条例では不十分だとして沼津市独自の規制の考えを尋ねた。
井原三千雄産業振興部長は、農地の埋め立てを滅少させるためには農業の活性化が第一だとし、環境保全機能など農地が持つ多面性に理解を得て安易な埋め立てをしないよう土地所有者に求めていること、埋め立て行為などの規制については検討の必要性を示した。
秋山精太郎都市計画部長は、土地埋め立ての是非を審査する権限は沼津市にはなく県が当たること、小規模な埋め立てについては土地利用指導の対象から外れていることを説明した。
続いて伊藤議員は、東部広域都市づくり研究会の解散は止むを得ないものだ、とした上で、「市長は七、八年後に道州制が導入されるとの認識を持っていると聞いているが、どのような理由からか」と質問。
斎藤衛市長は、研究会解散は広域合併を加速させるためのものだとし、研究会に参加した五市四町にとらわれず、それぞれの市町が自由な合併議論をした方がいい、との考えを示した。
道州制については、国の道州制ビジョン懇談会が二十一年度末までにビジョンを策定する予定で、自民党道州制調査会が八年から十年後の道州制移行を考えていることを根拠として挙げ、「その前に基礎自治体をつくる必要がある」と答弁。
今後の合併枠組みについては、県が提示した沼津・三島・裾野・函南・清水・長泉の三市三町を基本として中核市を目指すとしたが、この三市三町に固執する考えはないことも明らかにした。
また、新地方公会計制度について伊藤幹雄財務部長は、今までの財務情報に加え、資産・債務の状況がより分かりやすくなるから財務情報の透明性を高め、健全な行財政運営の推進に役立つものだと説明。今年度の決算から算定し、来年度に公表する、とした。
さらに伊藤議員は、大橋俊二裾野市長が合併枠組みとして、裾野・御殿場・沼津・小山・長泉・清水の駿東三市三町を提案している点を挙げ、「国道二四六号、御殿場線と(沼津市とは)共通項が多く、うまくいくと考える」と市長の見解を求めた。
市長からは「(三島市を含む)三市三町に固執するものではないので了承してほしい」との答弁を得て終えたが、休憩に入ってから質問の中に不適切な個所があると指摘され、該当する部分について削除することで了解した。
江本議員は「私達の方を向いて話し合ってほしい、計画を見直してほしい、と切実に願う多くの市民の思いを代弁することが私の議員としての使命だ」と沼津駅周辺総合整備事業について質問。
市の財政見通しにおける経常収支比率の今後と、十八年度から二十七年度まで十年間の市税を約四千億円とする根拠、道路特定財源の暫定税率が廃止された場合の同事業への影響予測を尋ねた。
伊藤部長は、経常収支比率については現状と同程度で推移すること、市税については国などが発表した名目経済成長率を基本に、税源移譲や定率減税の廃止などの変動要因を見込んで推計したも道路特定財源については、「地方自治体として大変貴重な財源だから、議会ともども確保に向け、現在、全力で努力しているところ」だと答えた。
また、三月中旬オープン予定の大手町再開発ビルについて江本議員は、市が公表している市の負担分だとされる二十九億円について疑問視。「計画通り基金からの借入金を返済できるか」「沼津まちづくり株式会社の収入となる駐車場の営業見込み」などを尋ねた。
秋山部長は、国、県の補助金を除いた約二十九億円が市負担だとし、保留床処分残の約三十一億円は保留床の賃貸収入で返済する計画であること、沼津まちづくり株式会社への約十二億円の出資金については第三セクターへのものだと説明。テナントとの賃貸借契約については「守秘義務」を盾に答えなかった。
さらに道路特定財源に関し江本議員は、県、静岡市、浜松市が暫定税率が廃止された場合のシミユレーションをホームページで公表している点を挙げ、沼津市の対応を求めたが、議員席から「質問項目にない。議長、質問をやめさせろ」などの野次が飛び、傍聴席からは「質問を続けなさい」の声。
江本議員が発言を続けると、再び議員席から「質問じゃないから答える必要はない」と声が掛かり、江本議員が質問を終えた時点で杉山議長が休憩を宣言した。
休憩中、議会運営委員会が開かれて江本発言の精査が行われ、何カ所かが問題だとして指摘された。
まず、市が、事業推進のために基金があるから財政的にも健全な状態で進めていくことができる、としている点をとらえ、「基金については、後ほど同僚議員が質問しますので、ここでは触れませんが」としたことが、質問にふさわしくない、必要ない、などとクレームがついた。
次に、一般財源の中で次に、一般財源の中で沼津駅周辺総合整備事業の割合が大きくなると、その他の沼津市独自の事業が制約を受けるということにはならないか、としながら、次のように発言。
「このことについても、ここで質問したいところですけれども、予算委員会で会派の同僚議員からもう少し詳しくただしていきたいと思っております。次に、道路特定財源の暫定税率廃止問題について伺います。
この問題については、現在、国会において激しい与野党攻防が繰り広げられています。沼津市議会においては、本定例会初日に道路特定財源の確保に関する意見書の提出が議決されてしまいましたので、その是非について、この場で触れるつもりは毛頭ありません。しかしながら、国会の情勢が混沌としている今日、政権交代の可能性も大いにあるわけで、道路特定財源が確実に維持されるとは、どなたも言い切れないのではないでしょうか。そればかりか、道路特別会計そのものが廃止される可能性もあります。このような政情不安定の中で、沼津市は道路特定財源からの補助金をはじめとした国と県の補助金に深く依存した駅周辺総合整備事業を、これから十五年間もの長期にわたって推進していこうとしているのですから、責任ある立場として当然ながら、道路特定財源の暫定税率分が廃止された場合のシミュレーションはしていることと思います。ちなみに、静岡県及び指定都市の静岡市と浜松市ではホームページ上で、この件に関して県民、市民に公表しています。そこで伺います。仮に、道路特定財源の暫定税率が廃止された場合、本市が現在進めている駅周辺総合整備事業にどのような影響があり、この事業はどうなるのでしょうか。事業期間の延長や、規模縮小など見直しは行われるのですか。お答えください」
この道路特定財源に触れた部分が、質問通告にはない、などとして追及され、伊藤部長の答弁も問題だとされた。
さらに、「道路特定財源の暫定税率分が廃止された場合の試算についてお伺いしたいわけですが、ご答弁では到底納得できないものでした。道路特定財源の暫定税率が廃止された場合の試算とマイナス分の財源をどうするのかぐらいは計画していなければ、とても責任ある立場とはいえないと思います」とした部分も指摘された。
一方、「次に沼津駅北拠点施設整備事業について伺います。この件に関しましては、昨年十一月の定例会においても質問していますので、同じことをなぜ聞くのかと思われる方もあるかと思いますが、新年度予算案に立体駐車場の基本・実施設計と、展示イベント施設などの基本設計ほかとして七千万円が計上されていることもあるので、改めて質問いたします。この事業の規模を当局はどのようにお考えなのですか。具体的には、事業費の概算といつごろ始めていつごろ完成するのかという事業期間の概略についてです。また、新年度予算に計上されている七千万円の使い道は何なのですか。以上、二点についてお聞きしたいわけです。
私がいろいろと調査したところによりますと、この時期に七千万円の予算だと総額七十億円前後の事業になると思います。
私は愕然としました。鉄道高架が終わってもこういう計画が待っている。鉄道高架は果てしなく続く巨大公共事業スパイラルの入り口に過ぎないと感じたからです。市は、沼津駅周辺総合整備計画を紹介するホームページの中で、駅周辺総合整備計画によって発生する鉄道跡地を利用して土地の高度利用を図り、静岡県東部地域の広域拠点としてふさわしい魅力的なまち、空間作りができますと言っておりますが、そのために、さらなる巨額の税金が堂々と投下されるということではないでしょうか。
また、鉄道跡地、高架下などの活用については、民間との協力で様々な市民二ーズに応えられるよう取り組んでいきます、とも言っていますが、それにしても一つ一つお金が掛かることです。本当に市民の声をしっかりと聞いて、市民と一緒に計画作りをしていくのでなければ、本当に市民のためにならないのではありませんか。
駅北拠点施設整備については、稼働率でも全国に誇れるキラメッセぬまづを維持補修しながら、大切に使っていけばいいのではないですか。県が隣に高層のコンベンション施設を建設してくれるというのなら、お任せすることはできないのですか、というのが私の考えです。
私は、自分の子どもや孫に少しでもいい沼津を残してバトンタッチをしたい。逆に、次の世代の人達が理解できないような借金はできるだけ少なくしたい。おそらく、この議場にいらっしゃる全ての皆さんが考えていることでしょう。しかし残念ながら、斎藤市長と、そして鉄道高架事業を推進する皆さんが描いている、いい沼津市の姿はだいぶ違うようです。少しでもその溝を埋める努力をするのが、言論の自由が保障された民主主義の原点であり、素晴らしさだと私は理解しています。以上で私の質問を終わります」としたが、これについて、議案の細部質疑でやるべきであり、一般質問にはふさわしくないと指摘された。
休憩中の精査で、江本議員の発言に対して、議員に事前に配布された質問書の要旨に「道路特定財源」がなかったことを根拠に発言削除を求める動きとなった。
ただ、伊藤財務部長が答弁に立っているように、市当局へは質問内容が伝えられていて質問と答弁という形は整っていた。
結局、江本発言で問題とされた個所については削除することで合意の方向となったが、最終的には週明け、二十五日の議会運営委員会で結論を出し、次の質問に移ることになりそうだ。
この五時間余の空転に傍聴席から疑問の声もあり、「あの質問のどこがいけないの」という声も聞かれた。
(沼朝平成20年2月24日(日)号)
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